素朴なのに魅力だらけの街
ヨーロッパを2か月間ひとりで放浪している時に、当初予定していたスペインとイタリアとモロッコに急遽加えたのがポルトガル。スペイン・セビージャからリスボンまで夜行バスで行けると知って、思いつきでバスに乗って向かいました。
事前情報も期待もほとんどなく、「ここまで来たらユーラシア大陸最西端まで行ってみようかな」ぐらいの軽い気持ちで気軽に行ったリスボンに、まさかこんなにも心をわしづかみにされるとは…!
ほんの数日のつもりが気づけばリスボンだけで2週間も過ごし、しかも何をするでもなくひたすら旧市街を歩きまわりシャッターを切り続けるという日々でした。
ヨーロッパは20か国ほど訪れてきましたが、そのうち3回以上訪れた街のひとつがリスボン。
規模としては首都と思えないほどこぢんまりしているのですが、スペインともイタリアとも東欧とも北欧とも違うリスボンだけの景色がかわいすぎてかわいすぎて…!
パステルカラーやレトロが好きな人はぜったいに訪れてほしい街です。
この記事では、リスボンについて概要をざっくりまとめます。
実際に私が過ごした旅ログ、ホテル、おすすめショップなどは別記事にて。
アクセス
なにせヨーロッパの最西端、日本から最もフライト時間の長いヨーロッパのひとつです。直行便は就航しておらず、最短でも16時間をぎりぎりきるかきらないか。
フライト時間の短さを重視するなら、エールフランスやルフトハンザなどのヨーロッパ系航空会社が乗継ぎ含めスムーズです。
直行便が飛んでいない、つまり日本市場が大きくないため、価格競争が働きづらく、リスボンへの航空券が驚くほど安くなったのは見たことがありません(隙あらば行きたいのでまめにチェックしているものの)。
フライト時間よりも低価格を重視する場合は、中東系の航空会社が頭ひとつ抜けています。カタール、エティハド、エミレーツなど。
※余談ですが…中東系利用はマイレージに注意。カタールはワンワールドというアライアンス(JALも所属)に加盟していますが、ほか2社は独自のマイルシステム。基本的にマイルを貯めたいので、私はまだエティハドとエミレーツは未経験です。
話は戻って、中東系はたしかにヨーロッパ系の3-4割引きの価格設定が多いのですが、ネックはフライト時間。トータルで少なくとも22時間程度、なかには30時間かかることもあるので、フライト時間と料金のどちらを優先するかは吟味すべし。
直行便がない都市へ行く時に私がよくつかうのが、直行便が飛んでいる大都市にまず飛んでそこからLCCや列車は別手配という方法。乗継ぎが配慮されない、預けた荷物のピックアップが必要などリスクは少なからずあるのですが、乗継ぎ都市も楽しめてトータルでコストが抑えられるというメリットもあり、一石二鳥が大好きな私はここ数年もっぱらこのスタイルです。
最近リスボンに行った時は、スペイン北部の美食の街・サンセバスチャンから夜行列車で入り、スペイン・マドリッドへの夜行列車で向かって直行便で帰ってきました。
ヨーロッパ内はLCC、高速鉄道、夜行列車、夜行バスと移動手段が充実していて料金もリーズナブルなので、日本からまずは飛んでしまうというのは手です。
リスボン観光に必要な日数ですが、初めて行くなら丸3日はぜひ。
- 旧市街を歩く
- トラムでお城に向かい散策
- ケーブルカー乗り比べ
- 高台から街と川を見下ろしてぼーっとする
- エッグタルトやバカリャウを食べる
- タイムマーケットに行く
これだけでまるまる2日は必要です。
ここに追加で、近郊にある世界遺産・シントラやジェロニモス修道院などを計画すると、もう1日は必要。
どんなふうに過ごせるの?
5W1Hでまとめてみます。
【When】いつ行く?
完全に私の好みですが、ヨーロッパは5-6月か9月と決めています(たまに7月前半や10月に行くことも)。理由は気候の良さと日の長さと旅費のリーズナブルさが全て揃っているから。
リスボンも例に漏れず、今まで訪れた9月・10月・5月はいずれも最高の気候ながらコスパよく滞在できました。
リスボンは黄色いトラムやケーブルカー、ピンクやミントグリーンなどパステルカラーの建物があり、青空に映える街。曇りが多くヨーロッパのなかで温暖とはいえ寒い冬よりは、晴れが多い初夏や晩夏をわざわざ狙う価値があります。
【Where】どこへ行く?
ざっくり分けると旧市街と新市街があるのですが、いわゆるリスボンらしい風景は旧市街に凝縮されています。
旧市街のなかでも、特徴ごとにエリア分けされています。といっても正直、どこからどこという明確な通りやラインの定義はむずかしいので、あくまで参考程度の知識でよさそう。
・Chiadoエリア
旧市街のなかで最高の立地!と思っています。Baixa-Chiado駅は地下鉄が2線通っていて、トラムやケーブルカー乗り場も徒歩圏内。市街地を一望できるサンタフスタのエレベーターも徒歩2分ほど。
100年以上続く老舗カフェ・Café A Brasileira、リスボン1ともいわれるエッグタルト専門店・Manteigaria、老舗ジェラート店・Santiniなどスイーツどころも近く、もちろんZARAやOYSHOなどのショップが並ぶ通りもふらっと行けます。
・Alfamaエリア
かつての大地震でも崩壊を免れ、古くからの建物が今も残っているエリアです。パステルカラーの家に洗濯物がはためき目の前は急勾配の坂…というリスボンらしい風景は、Alfamaエリアでたっぷり味わえます。
・Bairro-Altoエリア
日中は人影もまばらでパステルカラーやアズレージョ(ポルトガルタイル)の家々が並ぶ住宅街の雰囲気ですが、夜はところ狭しと並ぶバーがオープンしがらっと変わります。
リスボンはパリやロンドンなどの大都市との比較はもちろん、バルセロナやローマなどの観光都市と比べてもぐっとお酒やグルメがリーズナブルなので、気軽な夜遊び文化がある印象。私も若かりし時は夜な夜なクラブをはしごしたり、ファドという民族音楽を聴きに行ったりと、夜を満喫していた記憶があります。
・リベルダーデ通り
ブランドショップが並ぶ大通り。
私のおすすめルートは、Chiado~Bairro Alto~Alfama。
ChiadoとBairro Altoは碁盤の目のようになっているので、徒歩で路地を縦横無尽に歩き尽くすのが楽しいエリアです。
AlfamaはChiadoから28番のトラムに乗ってサンジョルジェ城へと上っていく時にAlfamaを通るので、お城への行き帰りに気になった場所で途中下車するのがおすすめ。
坂だらけで、フラットな街と比べると足への疲れは増しますが、リスボンは徒歩が楽しい街。地下鉄に乗っていては見られないふつうの暮らしを間近に感じるのが楽しい。
【What】何する?
リスボンはとにかく群を抜いて待ち歩きが楽しい街のひとつ!旅では2万歩ぐらい歩くタイプですが、リスボンはあてどもなく歩けてしまいます。
リスボンではずせない5か条がこちら。
・28番のトラムに乗る
世界中の観光客が1日中乗っているので、満員で乗れなかったり、乗れてもぎゅうぎゅうのなか立ちっぱなしだったりもざら。それでも、停留所で何本も見送ろうと、混雑していようと、一度はぜひ乗ってください。
Alfama地区で人や家とすれすれに進んでいくのはさながらテーマパークのアトラクション。私はレトロな電車(トラムや夜行列車)が好きなので、行く度に何度も乗ってしまいます。
・赤茶色の屋根と川を一度に見降ろす
ぎゅぎゅっと並ぶ家たちの向こうに川が広がる抜け感のある景色、リスボンっぽいなあと毎回思います。
・エッグタルトを食べる
エッグタルト、ポルトガル発祥なんです。本家の「パステイス・デ・ベレン」の店内で温めたエッグタルトを食べた時の衝撃はかなりのもの。ベレンまで行かなくとも、街の至るところで見かけるエッグタルト、どれもおいしいです。
日本ではそんなに見かけないせいか目に入るとつい手が伸びてしまいますが、お店ごとに少しずつ味がちがうのでエッグタルト巡りも飽きません。
・パステルカラーとアズレージョのミックスを写真におさめる
ピンク、黄色、水色、ミントグリーン、ラベンダーとパステルカラーのかわいいことかわいいこと!木製の扉やタイルが付いていたりするとますますかわいい。1日中かわいい家を見ながら街をさまよえます。
【Who】誰と行く?
断然、かわいいものが好きな人と一緒に!
パステルカラーかわいい!トラムかわいい!エッグタルトかわいい!が通じる人と!
かわいいものを求めて街を一緒にぐるぐるしてきゃーきゃー言い合える同士だとより楽しい。
というのも、、初めて訪れて2週間過ごして帰国して以降、しばらく「世界でどこがいちばん好き?」と聞かれて「リスボン」と答え続けていました。
あまりにも興奮気味にリスボンを語る様子に母と妹が感化され一緒に行くことになったのですが、ふたりの反応は(期待値が上がりすぎたせいか)「なんか素朴な街」。そんなにかわいさが響かなかった模様……。
繰り返しになりますが、パステルカラーやトラムなどのレトロでどこかなつかしい感じがツボの人と一緒に行った方が、街全体をテーマパークのように楽しめます…!
【Why】リスボンを選ぶ理由は?
- ヨーロッパでもほかに似ている街がない独自の景色
- パステルカラーのかわいさ満点
- お菓子とシーフードがおいしい
- トラムとケーブルカーで遊園地気分
- 有名店の味を一度に楽しめるマーケット
コンパクトな街に、旧市街も川も海もお城もトラムもスイーツもシーフードも楽しめるのが特徴。旧市街メインなら3日間の滞在でもひと通り楽しむことができるので、短い休みにも。(といってもかわいすぎていくらでもいたくなってしまう魔力があります……!)
【How】どう楽しむ?
旧市街の真ん中に泊まって、ホテルを出たら石畳と坂道、ピンクや黄色やミントグリーンの家の連なりにときめくところからスタート。
エッグタルトを食べ歩き、トラムに乗って細い路地をぐんぐん進み、海と赤茶の屋根を見下ろしながらサングリアを飲み、ケーブルカーに揺られ、かわいいホテルでお昼寝し、テラスでポルトガルワインを片手に夕暮れを眺め、夕食は魚介リゾットと赤ワイン、民族音楽・ファドを聴きながら夜が更ける・・・という1日をぜひ。
5月初旬(ゴールデンウィーク)、9月後半、10月中旬に行ったことがありますが、いずれも半袖でも暑く日差しも強かったです。いずれもほとんど雲のない快晴だったのですが、初夏と晩夏は日差しが強くとも海から抜けてくる風が涼しくて、街歩きにもってこいでした。
リスボン1都市なら、丸3日はほしいところ。
私は海外に行ける機会が年に数回しかないので1都市の旅がもったいないと思ってしまい2都市以上を組み合わせるタイプなのですが、リスボンとどこかを組み合わせるならフライトのハブになっている都市(ロンドン、パリ、アムステルダムなど)か、同じポルトガル内のポルトかだと旅程はスムーズです。
隣国スペインだとマドリッドは夜行列車が運行しているのでぜひ体験してほしいのですが、マドリッド自体はそんなに見所がないのであえて選ばなくてもとは個人的に思います。
他のヨーロッパシティとどう違うの?
リスボンならではなのが、首都ながらも素朴な雰囲気。
サイズ感が街歩きにちょうどよく、でも川も海がすぐで日常に溶け込んでいるから開放感もあって、旧市街のどこを歩いてもファーストフードやコンビニがない貴重な風景だなと思います。
ほかの街との比較だと、どちらも川/海の近くで港町、サッカーチームがあるなどから、バルセロナとは似ている部分も。
ただ、実は心して行ってほしい点もあります。
リスボンはヨーロッパのなかで物価も安く、今ヨーロッパで人気急上昇の都市。治安は良い方ともいわれていますが、一部(特にChiado地区)で街の汚れが目につくことも。
そして坂道は、想像していても経験していても毎回呼吸が苦しくなります。。
良いところだけ書くと期待値が上がってしまうので、リスボンの気になるところも書いておきます。
・落書きがひどい(ケーブルカーも黄色が見えないほどの車体も)
・犬や猫の落とし物が多い
・ゴミが散乱傾向
・飲み屋街は悪臭が…(酔っぱらいが外で・・・)
・石畳の坂は滑る(ソールがつるんとしている靴は要注意)
・ヒールはたとえ1cmでも隙間にはまる、結果傷む
・石畳はスーツケースが転がらない
・坂道だらけ、登山並みの消耗
・28番のトラムはいつでも激混み、満員だと容赦なくスルー
・街の規模に対し観光客が多くどこも混んでいる
・乾燥が激しい
・日差しが強い
・物乞いが多い
落書き、ゴミ、匂いはどうしようもないので、あるがままの姿を受け入れるしかないですが、こんな心持ちに転換すると気が楽です。
- 坂道がたくさん
→え、サンタフスタの裏なの?高低差…という面白さを迷路感覚で楽しむ。
ぜひホテルにある紙の地図で路地散策を(Googleマップでも出会えない路地裏多数)。
振り返ると川、とか、坂を登り切ると高台からの絶景、とか予期せぬ景色に出会える。
坂道だからこそ発展した乗り物はもはやアトラクション(トラムとケーブルカーはマスト)。
- 物価の恩恵を楽しむ
→ルーフトップバーでもシードル250mlが3.5ユーロとか(東京の半額感覚)
- どこも混んでいる
→トラムやケーブルカーは1本待てば大抵乗れます。焦らない気持ちが大事。
ランチが終わった15時頃にお腹がすいたらタイムアウトマーケットへ。
1日中開いていて、いつでも名物を食べられて、いわゆるフードコートとはちがうクオリティが揃っています。
結論:女子心をくすぐりすぎる街
20か国以上ヨーロッパの国を訪れているなかでも、リスボンは3度では飽き足らずすぐにでもまた行きたい街のひとつ。初夏と晩夏に行っているのですが、その時期の気候も最高すぎて半年ぐらい滞在したい気持ちがずっとあります。夢。
リスボンも「魔女の宅急便」のモデルのひとつと言われていて、たしかにジブリっぽいノスタルジックさが旧市街に漂っています。
絵に描いたようなかわいさが目の前に広がる街、リスボン。かわいさと素朴さとのどかさとが共存する、首都と思えないほどレトロでこぢんまりした街です。