荒れた部屋にさよならを告げたい

気分:荒地から抜け出したい、のに

ちょっとお茶を飲んだコップ、ケーキを食べたお皿とフォーク、晴れたらまとめて洗おうと思っている洗濯物、2-3日さぼっただけで目立つほこり、シンクのよごれ……

生活していると必ず積もっていくタスクの数々。

目につく度に「片付けないと」「掃除しないと」「洗濯しないと」と思うけれど、いかんせんからだが動かない。見て見ぬふりをすると倍々ゲームになっていくだけだと、わかってはいるのに。わかってはいても。

無駄な物は買わないと引越しの時にあれほどかたく誓ったはずなのに、季節が変われば迎え入れる新たなワンピースに、店頭から消える大評判のリップ、IKEAに行ったら目に入る“あると便利だろう”グッズと、なぜこうも物は増えるのか。収納スペースが増えることはないというのに。

 

症状:物がない部屋への憧れとあきらめと

増えていく物たちにときめきをもらえど、部屋が荒れていくと話はまた別。元の位置に戻せばぜったいに部屋はちらからないはずなのに、そんなシンプルなことがなぜできないかと情けなくもなりながら、忙しさとちらかり具合は比例するもの。

なにより、整理整頓してはいつの間にか雑然として発狂寸前、という一連の流れを何十年も続けていることに、本当は心底疲れている。のに。

それなのに、なぜ部屋は荒れるのか。

やるべきなのにできていない、って、脳のCPUをずーっと占めていて、脳の疲労はすごいことに。旧Macbookでいうならばファンがずっと稼動している状態。負担が心配。

でも、できないものはできない。できないんだもん。片付けたくても、腰が重い、重すぎる。

仕事も忙しいし、テレワークだと職場と生活が一緒になって切り替えしたくてもしづらいし、夕方からテラスで飲んだり深夜まで深酒したりできないから発散する場もないし。

生活空間を整えることが暮らしの基本とわかっていても、毎日一定の状態に保つことができていたら悩むこともないわけで。

なにかスイッチが欲しい、そしたら切り替えて持続できるよう努めるのに、、と思いますよね?思います。切に。

 

解決策:ミニマルな暮らしを疑似体験

部屋を整える最大の特効薬は「人が家に来る」一択。ながら、このご時世ではなかなかそれも叶わぬ日々。

家に人が来ないなら、こちらから理想の家に行ってみよう、と発想を転換した解決策を発見しました。

結論、目的に適った強制脱出は最高だった!

  

スイッチは軽やかにスパイシーに

背中を押してくれるスイッチにはいろんな種類があります。負けん気に火をつけるものや、感動にパワーをもらうもの、憧れの片鱗に触れて追随したいと原動力になるもの、知恵を得て自分に反映するヒントになるものなど、タイプも向き不向きも合うタイミングもさまざま。

今回は、実利と気分転換とでお尻に火をつけるタイプ。

ワンピース1着分の価格を、空間の整え方の参考にも日常のスパイスにもなる体験に投資して、帰ったら部屋を片付ける動線をつくる、というホテル活用方法です。

 

向かうは日本初上陸ブランドホテル

建築界の重鎮が手がけているのに軽やか、都心なのにナチュラル、ミニマルなのにゴージャス、そんなバランスにインテリアのヒントがたっぷりのホテルは、『東京エディション虎ノ門』。

エディションは、マリオット・インターナショナルが「ラグジュアリーとライフスタイルの絶妙なバランス」を掲げて展開するブランドです。

マリオット・インターナショナルは、ラグジュアリー/プレミアム/セレクト/長期滞在/コレクションと30の主要ブランド・7,600以上のホテルを展開する世界最大手のホテルチェーン。

ラグジュアリーのなかでも、「クラシックラグジュアリー」と「ディスティンクティブラグジュアリー」の2つのカテゴリーがあります。各カテゴリーに属するブランドは以下の通り。

・クラシックラグジュアリー:ザ・リッツ・カールトン、セントレジス、JWマリオット
・ディスティンクティブラグジュアリー:リッツカールトン リザーブ、ラグジュアリーコレクション、Wホテル、エディション・ホテル

エディションはラグジュアリーカテゴリーのなかで最も新しく、2013年にロンドンで開業。2021年9月時点では、ニューヨーク、バルセロナ、上海、アブダビなど、11軒が展開されています。2022年末までにさらに8軒オープン予定とのこと。東京にも虎ノ門に続き、2軒目となる銀座が2022年前半に開業予定です。マリオットが注力するブランドであるとうかがえます。

エディションは、イアン・シュレーガーというブティックホテルというコンセプトを生み出し一時代を築いた生きる伝説によるプロデュース。今主流になっている、ロビーを社交場に変えるというロビーソーシャライジングは、イアン・シュレーガー発なんです。

デザイナーを選ぶ際は、地域の特性に合わせるとのこと。日本進出にあたって白羽の矢が立ったのが、隈研吾。エディションには隈研吾テイストがたっぷりと詰まっています。

 

東西の融合よ、かくあれ

エディションのコンセプトは、革新的でありながら質の高いサービスとオペレーションを有すること。「革新」「ユニーク」「ラグジュアリー・ライフスタイル」がキーワードになっています。

『東京エディション虎ノ門』のテーマは「East meets West」。日本の美意識と西洋の美意識とを結びつけるという意図があるとのこと。

実際に訪れると、随所にそのコンセプトが感じられました。計算されているのにどこかフランク、今っぽいけどカルチャーもある、その塩梅が心地よかった!

東西の融合というテーマが最も表れていたのが、客室でした。

 

物のない暮らしのなんとさわやかなことか

客室は、隈研吾らしく木でまとめられています。スタンダードな客室で広さは40平米ほど。都内のラグジュアリーホテルのなかでは平均的な広さです。

客室に入った瞬間は広い感じはしないなと思いましたが、客室に入り自動でカーテンが開いて窓が全部見えてからは光の効果もあってかゆとりを感じるように。

扉に取っ手のない棚、一面白い壁、飾りもないシンクやバスルームなど、全体がシンプルにまとめられています。

コーヒーマシンなどはオープン棚に格納されていて主張せず、電話やスピーカーなど見えるところに配置されているものはデザイン性が高いことも、クリーンさを印象付けます。

かといって冷たさや無機質さを感じさせないのは、木の為せる技。

物がないことは、生活感がないこと。

色や柄がなく全体のトーンが一定だと、統一感と静寂が生まれること。

クリーンであたたかい、ミニマルな空間は、思索に耽る手助けにも。ぜったいに家に存在する食品や調味料、サランラップなど、パッケージの鮮やかな色づかいは調和を見出し、時として色の暴力と言わんばかりに強烈に景観を乱すもの。それらが皆無で、白と黒と木とで統一された空間は、広くさわやかで、気が散る原因もなければ遮るきっかけもないというお膳立て。

バスルームも白で統一。アメニティの「LE LABO」の香りに髪もからだも包まれると、「ああ……スッキリした空間でいい匂いに溺れるのがこんなに良いとは……」とますますていねいな暮らしに近づきたい気持ちがむくむくと。

 

さらなる清涼感を求めるなら

部屋のクリーンさにまずは荒れ地からの第1弾逃避が叶い、ひと息ついたあとは、プールへ。

プールは、やっぱり非日常のひとコマ。

ロビー階の奥、案内されなければわからない、壁と一体化した扉の先に小さな更衣室があり、その先にプールが続いています。

プールは長さ14mとこぢんまり。外は見えないため開放感はありませんが、間接照明の光がやわらかく室内を照らし、宇宙船の中のような印象を受けます。白い壁に青いプール以外に装飾がなく、こちらもミニマルな空間。

プールの奥には丸いジャクジーがあり。5-6人は入れそうなサイズで、足を伸ばしても悠々と浮かべます。

 

テンション上げてこ

『エディション』のパブリックスペースは、イケイケドンドン風味。

客室やプールで静謐さを感じるかわりに、ロビーやロビーの奥に続くバーとレストラン、廊下ではクラブミュージックのような音楽が結構な大音量で流れていてエネルギッシュ。

いわゆるロビーはなく、レセプションデスクのそばに植物で囲まれたスペースがあります。砂漠のなかにあるオアシスのような雰囲気。

その奥にはソーシャライジングをテーマとしたバー、そしてレストランへ。

バー・レストランともに1箇所しかなく、この空間に集約されています。吹き抜けで天井が高く、驚くのはその緑の量!植物園を思わせるほどこんもりと、鬱蒼と茂っています。都心のビルの高層階にいることを忘れるほど。

窓の外には東京タワーが目の前に。

空が広い!

都心の空は、地上から見上げると時にコンクリートを見ているのか空を見ているのかわからなくなる。太陽が地平線に潜る瞬間はあたりまえに見られないし、夜空の星は数えるほど。それに慣れると、空を見上げることが気づけば減っていたりする。手元にはいつもスマホがあって、下ばかり見る習慣がついていて、空はますます遠くなった。

だけど!空を見るってやっぱり気持ちいいな〜〜と思わせてくれるのが、ここ『東京エディション虎ノ門』。周囲にも高層ビルはあって、空だけというわけにはいかないけれど、それでも近い上空は遮るものなく見上げられて、おまけに東京タワーと海も見えるというロケーションは、日常にはなかなかない景色です。

夕暮れから夜になりゆく時間を長く眺めていたくて、ナイトアフタヌーンティーを楽しみました。

燦々と満ちる光のなかで朝食を

朝食は、レセプションと同じ31階「The Blue Room」にて。

太陽の光がたっぷりと降り注ぐ吹き抜けの空間に映える、青いソファ。上空なのに深海を思わせる色味です。

太陽の光を室内でこんなにもダイレクトに浴びられると、清々しく、神々しい。

メニューは和食と洋食から選択可。ドイツ人シェフが手掛けるとのことで、洋食がよりホテルおすすめであり人気とのこと。アボカドトーストかエッグベネディクトで迷うのは避けられません。

 

 

実利と気分転換を叶える脱出を、理想の暮らしへの0.5歩に

雑然とした自宅、漫然とした思考から離れて、静謐な空間という概念に触れると、荒れ地生活をリセットするきっかけになります。エネルギッシュな音楽と空間は、「帰ったらその勢いで片付けてみようか」なんてすこし後押しする作用があるような。

さまざまな散らかりをスッキリさせるためのスイッチ、という使い方が機能するホテル、それが『東京エディション虎ノ門』でした。

プライベートな空間はシンプルで、パブリックな場所は静けさやエネルギッシュが使い分けられていて、刺激も落ち着きも整理もやる気も満たしてくれます。

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