人の狭間で疲れた、どこか遠くへ……な気分なら

気分:なにもかもを忘れ去りたい……どこか遠くへ……

もう調整とか交渉とか無縁の世界で毒気を抜きたい…どこか遠くへ…

仕事をしているとそんな風に思うことがありませんか?私はしょっちゅうあります。その度に「こういう時はどこがいちばんデトックスになるだろう」と考えます。

そんな時に効果的な街を今まで行った都市のなかで考えてみたところ、即座に浮かんだ都市がありました。

症状:調整の嵐で疲弊

そもそも、「もう調整とか交渉とか無縁の世界で毒気を抜きたい…どこか遠くへ…」と思う時はどんな時なのか、私の場合で考えてみると、本質的ではない調整作業に忙殺されている時だな、と。

「仕事すなわち調整」ではないかと錯覚するほどに避けて通れないのが360度の調整。

社内でも誰からどの順番で話をするか考え、他部署にはスムーズに波風立てず協力してもらうために根回しし、クライアントとはお互いの利益になる着地にもっていくために骨を折り、発注先にはいかに意図を理解してもらって円滑にトラブルなく勧めるかに気を配り…。

ひとりで完結することがない、というのは時に気が遠くなる行程に見えます。そして「一生これをやっていくの…?」と絶望します。

調整が業務のメインになっている時期は明らかに疲弊度が高く、終わりが見えると急に「あ、もうだめ…リセットしたい…」という衝動にかられます。

今回はこんな症状の時の解決旅の話です。

・絶望と衝動にかられながらも、脱するためのパワーと意志はある
・頭と体は疲れてはいるが、気力は残っている
・いっそ遠いほどリフレッシュできる気がする
・日常にはない、かけ離れたことをやりたい

原因:人に揉まれて磨耗、緊張しっぱなし

調整がしんどいのは、「責任」と「緊張」が常につきまとうから。

アイデア出しやデータ分析などひとりでできる事は時間もペースも自分でコントロールできるけれど、社内調整でも社外調整でもひとりでは完結できないことばかり。円滑につなげるか、媒介として間に入る価値を出しているか、皆にきもちよく動いてもらうためには…など、その責任が常にのしかかります。

その責任を果たせるように全方位に目を配り続けると、どうしたって緊張しっぱなし。責任と緊張が絶えず押し寄せてきたら、それはすり減りますよね。

解決策:匿名で壮大な癒やしに浸る

すり減り続けるのは危険。責任と緊張から一旦、気休めでも解放される時間が必要です。調整三昧で消耗しながらも「これに屈してなるものか」というエネルギーと「だから一旦スイッチオフを…」というポジティブなエスケープとがマッチするぴったりの旅先があります。

その地とは、ハンガリーの首都、ブダペスト

私の場合、人と人との狭間で長時間緊張し続けると、匿名になりたくなります。誰も自分を知らないところで、思い煩うことなく人目を気にせず文字通りリラックスして過ごすことで、やっと平常運転に戻れるというか。

それが叶うのがブダペストなんです。

ブダペストってどこ?

ハンガリーの首都、ブダペスト。

チェコ、ルーマニア、ポーランドなどと併せて東欧といわれるように、ヨーロッパの東側に位置。日本からの直行便はなく、飛行機だと乗り継ぎ便、または近隣国からの鉄道やバスによるアクセスとなります。つまり日本からだとすこし時間がかかる国。

たどり着くまでに時間と体力を要する国ですが、特に日本人には一生に一度は行ってほしい国のひとつです。

なぜブダペスト?

「これに屈してなるものか」というエネルギーと「だから一旦スイッチオフを…」というポジティブなエスケープとを両方叶えられる街、それがブダペストなんです。

こんな症状にどんな風に向いているかというと…

絶望と衝動にかられながらも、脱するためのパワーと意志はある
→パワーと意志がある時はそれを活かさない手はない。ガッツがあると、言語や文字の壁を乗り越えやすい。(パワーと意志がない時に海外に行くとコミュニケーションがしんどい)

頭と体は疲れてはいるが、気力は残っている
→気力があれば、多少疲れていても長い移動距離も耐えられる。遠くに行くほどリフレッシュできるという説もあり、気力がある時はぜひ遠くへ。

いっそ遠いほどリフレッシュできる気がする
→ピンポン。とはいえ距離が遠いと物理的に疲れてしまうのは事実。だからこそ現地でリフレッシュができる要素がある場所を選ぶとバランスよし。

日常にはない、かけ離れたことをやりたい
→昼間から屋外の温泉にのーんびりつかって半日だらだら。川沿いで日本にはない中世の建物の夜景を見ながら散歩。路面電車でぼーっと街を一周。

これらを満たし、仕事している時と違って気合いをオフにして過ごしながらも、日本でできそうでできないことからぜったいにできないことまでゆるく楽しめるのがブダペストなんです。

匿名で壮大な癒やしに浸る旅とは?

何者でもないひとりの人間にもどる時間は、いつものルーティーンの生活のなかではなかなか捻出できません。さまざまな顔を持っているからこそ、無の状態で体力も時間もお金も自分のためだけにつかうのは至難の業。旅は無条件にその状況にワープできるから、疲れている時こそ活用すべきだと感じます。

ブダペストは、フランスやイタリア、スペインなどの西欧とは雰囲気がまるで違います。同じヨーロッパでも、旧ソ連の影響が色濃く残っている街。日本人観光客はまだまだ少なく、東欧有数の観光地のひとつではあるものの日本からの隔世の感が強いのはたしかです。ゴールデンウィークに行った時でさえ、日本人には遭遇しませんでした。

その匿名性と自分のためにリソースをつかえる自由とを最大に味わうなら、「壮大な癒し」へ。

ブダペストといえば温泉。ブダペストの名物が癒やしそのものなので、旅の目的も叶えるし街のいちばんの魅力も楽しめるしと一石二鳥の旅となります。

ブダペストではほとんどの施設が水着着用という点は日本とは異なりますが、それでも日本人に会うと絶妙に気まずいですよね…。東洋人自体が少ないですが、私が訪れた時は現地の人が観光客に対しても特に視線を送ってくることもなく好きなようにのんびりできました。温泉は特に周りが気になってしまう場所ですが、1市民としてなじめた気がします。

匿名と自由と温泉、本来共存しない3者の関係が奇跡的に成立するのがブダペストです。

経験者プレゼンツの72時間ブダペスト

ブダペストは広さ525平方キロメートル、東京23区(619平方キロメートル)よりひとまわり狭いぐらいです。地下鉄・トラム・バスが非常に充実していて、市内の移動も簡単。

そんなブダペスト、駆け足の3泊5日はもったいなくて、4泊できると及第点です。3泊の場合、ヨーロッパ系の航空会社を利用して日本を出発したその日の夜に到着したとしても実質2日間しか現地で過ごせないんですよね。丸3日、72時間は確保したいところです。

ブダペストでの必須体験といえばこの3つ。

・温泉
・ドナウ川沿いの夜景
・トラムと地下鉄

温泉も夜景もトラムも日本にあるけど…と思うかもしれませんが、ブダペストならでは且つ体験する価値ありです。

1日目:ドナウ河の夜景をトワイライトに

到着後はまず夜景を見に外へ。

2日目:温泉と幸福の島へ

朝から温泉へレッツゴー。ゲッレールト温泉は創業100年以上、アールヌーボー式の建築が美しいハンガリーを代表する温泉です。屋外、屋内に温泉プールがあります。男女一緒に水着着用で入るタイプ。

更衣室が男女別に分かれていません……!というか更衣室という概念がない。1人用の個室か2人用の個室を借りられるので、カップルの場合は2人用を一緒に使うことができます。着替えもでき、荷物もまとめておいておけるので、日本のロッカータイプよりもプライバシー性が高く快適。

ブダペストの温泉の温度は40度前後と、日本に比べてぬるめ。現地の人は長く浸かって社交場として楽しんでいるようです。日本人にとってはぬるくて風邪をひきそうと感じる人もいるので、そんな時は屋内にある温度高めの温泉へ。

温泉からあがったら、ドナウ河下り。市民の足として運営されている水上バスのようなこのボート、わずか500円ほどでドナウ川を遊覧できます。

目指すはマルギット島。中州にある島です。ここの幸福度は驚異的でした……!骨抜きになります。芝生があって噴水があって売店があって、いたってふつうの公園なのですが、一切の邪気がないただただひたすら幸福しかない島。

3日目

朝は市場へ。市場併設のカフェでランチもできます。

その後は地下鉄で再び温泉へ。ブダペストの地下鉄は、ロンドン、イスタンブールに次いで世界で3番目に営業を開始し、世界で唯一の世界遺産に登録されています。

乗り物好きの私が一目惚れしたのが1号線。黄色の色味も、3両編成も、ドアがガシャンって閉まるのも、存在自体がかわいい……。

ちなみにブダペストはトラムもかわいいです。(私はこのトラムが来たり行ったりするのを1時間ずーっと眺めていました……それでも飽きなかった……)

だからブダペスト

温泉、夜景、乗り物と、全くベクトルの違う楽しみ方を一度にできて、英語すぎず日本人がほぼおらず、商業的すぎず先進的すぎず、匿名で癒やしを感じられる都市として、ブダペストは完璧。

ポジティブなエスケープにこれほど適した街はないのでは?と世界36か国を訪れていて思ったのが、ブダペストでした。