「どこがいちばんよかった?」
旅が好きと言うと毎回必ず聞かれる質問。
順位づけという発想がなくて、“いちばん”なんて選べないため、毎度答えに窮する質問です。
「いつ/だれと/何をしに/なんのために/どうやって/いくらで行くかによって、基準も選び方もまるでちがってくるしなあ、そもそも“いちばん”を仮に選んでみたところでその人にとっても“いちばん”になりえるかはまたべつの話だしなあ、背景を語らずに期待値をむだに高めるのも本意ではないしなあ、、」などとひとりで勝手にややこしく考えて、「うーんいちばんかあ、、」と戸惑い、「『帰りたくない、なんで帰らなくちゃいけないんだろう』って思ったのはニューヨークかな」のようにその場の求められていそうな答えに合わせるなどしてその場を乗り切ってきました。
それでも何十回と繰り返されるこの質問、じぶんでも毎回悩むのに疲れて、前提を定義して考えてみることにしました。
「(“いちばん”かどうかは一旦さておき、)良かったと思うということは、イコールまた行きたいと思うということ、つまり一度ならず二度三度と訪れている街が定量的にはよかった街といえるのでは?」と考え、これまでに3回以上訪れている国や街をまとめてみました。
確かに集めてみたら、絶対的に好きすぎるところばかり!
タイ
人生で日本の次に長く(100泊以上)滞在している国。
バンコクは累計滞在日数100日以上、バンコク近郊ではアユタヤ、カンチャナブリ、サメット島、チャーン島など、バンコク以外だとプーケット、カオラック、パンガー、チェンマイなどをめぐりました。
バックパッカーでドミトリーに長期滞在していたこともあるし、社会人になってからは週末弾丸で5つ星ホテルに泊まるなどピンからキリまで体験していて、グルメ・ファッション・観光・街歩き・シュノーケリングなど幅広く楽しんできたのもタイです。
何が好きって、あのタイ独特のゆるーいおおらかさ。おおらかでにこやかなタイの空気、到着した瞬間から緊張感がほどけてリラックスモードに入れます。
怒ることが恥という文化で、大抵のことは「マイペンライ」(大丈夫、問題ない)で許し許される寛大さは世界広しといえどタイならではのような。遅刻した方が「マイペンライ」って言うんですよ、、!
貧乏旅行もリッチな旅行も、肩肘張らずに好きなように楽しめる国。屋台三昧も、ミシュランめぐりも、どっちもおなじように楽しい。そして何か起きても「まいっか、タイだし」って思えてしまいます。
すべてをエンターテインメントに昇華できるというか、懐が深いというか。だから自分に世界にやさしくなれる場所。
イタリア
イタリアという国は、雰囲気がツボすぎます。街ごとに、「ここは同じ国ですか……?」と戸惑うぐらい、見せてくる顔が違います。
3歩進めば遺跡にあたるローマ、世界でここだけの水路の街・ベネチア、知的なフィレンツェ、気取らない港町・ナポリ、エキゾチックなシチリア、みんな違ってみんないい。
街並みは芸術品、でも温かみもあるのがイタリアです。
人生を楽しむことを優先しているような素直さとあの自由な感じは、ほかのヨーロッパにはなかなかないムード。
人生を謳歌することをリマインドしてくれる国。チャージできる。
ローマは3回、ベネチアとナポリは2回、ほかフィレンツェ、ミラノ、ベローナ、バーリ、シチリア島、ファヴィニャーナ島、カプリ島を訪問済み。まだまだ足りない、、行きたい街が多すぎる。
ソウル
20代半ば、毎月通うほどドハマリしていました。目的はコスメ&服、クラブ、韓国語の実地練習。
新羅やリッツに泊まって、コスメや服を爆買いして、お昼から飲んで5食食べて、クラブはしごして、朝5時に焼肉で〆、と遊び倒していた青春の街。
当時は円高で、東京の半額ぐらいのコスパで遊び尽くした感があります。
最近は年に1回、コスメの大量仕入れに。
儒教が根強く、男尊女卑や学歴至上主義など思想が独特すぎて、「美とは」「成功とは」「幸せとは」を考えさせられる国。
ハワイ
みんな大好きハワイ。10回ほど行っています。
もともとは「海の目の前にビル並べて人工的すぎるでしょ」と思ってアンチだったんだけど、おとなになってから再び行ったら虜になりましたごめんなさい。
ハワイはあの気候、特に風がたまらない……日本を含むアジアには吹かない風。強い太陽とさわやかな風で、ただいるだけでデトックスされます。浄化される場所。
オープンカーでドライブすると、生きてて良かったって思えます。キュアという目的を完璧に果たせる地。
パリ
パリが好きじゃない女性っているのかな、と思ってしまうほどに、女心くすぐりすぎの世界。気品の街。レディであるかと問われるような、そんな貞淑でつつましやかな気持ちになる。
建物の重厚感と品格は、歴史だけが織りなせる偉業。
でも街ゆく人は皆シンプルなのに品があっておしゃれで、「個性とは」「守りたいものとは」って考えるきっかけをくれるパリ。
パリに行く時は心して行かないと、となんだか緊張感があります。
ニューヨーク
ここはもうなんというかソウルメイトならぬソウルシティ。
初めて行った時、たった3泊の滞在だったのに、帰りの飛行機で「なんで帰らなくちゃいけないんだっけ?」と本気で思ったのを今も覚えています。
道行く人に「素敵なドレス(ワンピースのこと)ね!」って言われたり、ちょっと飲み物買う時に「住んでるのかい?」って聞かれたり、拒まず選ばないフラットな空気が好き。
ここに住まないことを決めているのはほかならぬ自分なんだと思う(ほどに、ニューヨーク自体はとても開かれている)。
バルセロナ
もう無条件に好き。
パリが思わず背筋を正す街であれば、バルセロナは陽気な気分でリラックスできる街。
街としてのバランスが完璧……!
徒歩で行けるビーチ、合理性と芸術性の融合が素晴らしすぎるガウディの建築の数々、タパスでも美味しいバル、迷わない碁盤の目のつくり……歴史ある街なのに、芸術性を保ちながらも機能性に優れていることに感嘆。
港町であの温暖な気候は、もはや向かうところ敵なしでは。
何歳で行っても楽しい。そしていつでもおいしい。シティ派もリゾート派もアート派もグルメ派も建築派も幸せにできる稀有な街です。
ベトナム
初めてのベトナム探訪でハノイ・ハロン湾・ホーチミンと周遊。離陸時に「二度と来ない!」って思ったぐらい22歳にはいろいろ衝撃でした(主に商魂のたくましさに)。観光地ばかり周ったことが要因だったのだけど、愛想がなく笑顔もなくとれるお金はとろうという姿勢にアジアのシビアな現実を感じたのでした。
でもそれぐらいインパクトのある国はそうそうなく、数年後にはあの刺激が恋しくなって再訪。
その後、ホイアン、フエ、ランコーにも行って、いつでもふとまた行きたくなります。
ごはんがおいしい、雑貨がかわいい、フレンチ文化とのミックスが美しい。
どことなく陰があり、晴れていても湿っぽさを感じる。
タイともほかのアジアともぜんぜんちがう、クセになる国。
リスボン
バンコクに次いで、人生に2番目に長く滞在した街、リスボン。
黄色とオレンジとパステルカラーでできた街がかわいすぎて素朴で、歩けども歩けどもまったく飽きませんでした。路地を曲がる度に「かわいい……!」以外の声を失っていた記憶。
スペインのグラナダでたまたま泊まったゲストハウスがすごく居心地がよくて、リスボンにも系列のゲストハウスがあるなら行ってみようというノリでガイドブックもないままに行ったら、あれよあれよと2週間も沈没した街です。
黄色いトラムとケーブルカー、石畳と坂道、パステルカラーの家と洗濯物、エッグタルトと魚介のリゾット、川と海、サッカーとサーフィン、旧市街とビーチリゾートなど、楽しみ方が多彩すぎる。2週間いたし、その後2回行ったけど、それでもまだまだ飽きそうにない。次は1か月は滞在したい。
1回では知り足りない街ばかり
ここに挙げた国や街には勝手にホーム感を感じていて、節目節目で訪れるんだろうなと思います。
広い世界でホームだと思える場所をいくつも見つけられてから、大きな決断を前にめげそうになったりこわくなったりした時は「まあどうにかなるか、だめならバルセロナで暮らしてみるのもいいな」とわりと本気で思って踏ん張れたりしてきました。
リピートする街に出会うのが楽しみです。